名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)517号 判決
原判決を検すると、所論の各供述調書を、所論の事実に対する証拠として、それぞれ援用していることを認め得るし、また、原審第一回公判調書を検すると、被告人及び弁護人は、右の各供述調書を証拠とすることに不同意であると述べた旨の記載があることを認めることが出来る。しかしながら、原審第二回公判調書を検すると、主任弁護人は原審第二回公判廷に於て、前記の各供述調書に対する前回の不同意を取消し、改めて、これを証拠とすることに同意する旨陳述したこと並びに当時同公判廷に在席し、弁護人の陳述を聴いて居た被告人が、これに対し何等反対の意思を表明しなかつたことをいずれも肯認するに足るのであつて、斯様な弁護人の行為について、若し被告人に異議あるときは、即時其の場に於て其の旨申立てるのか当然であるにも拘らず、被告人が毫も左様な挙措に出なかつたことから考えると、何等か特別の事情の認めるに足るものがない限り、被告人は弁護人の前記の行為を承認したもの、すなわち所論の各供述調書を証拠とすることについて、沈黙の中に同意を与えたものと認めるのを相当とするから原審は被告人の同意しない供述調書を証拠として採用したものではなく論旨は採用し難い。